日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-101
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血液造血器系
ワルファリン耐性ドブネズミ及びクマネズミにおける新規耐性機構の解明
*田中 和之谷川 力石塚 真由美坂本 健太郎藤田 正一
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抄録

【目的】ドブネズミやクマネズミは様々な感染症の病原体や寄生虫を媒介する衛生害獣である。日本においても近年殺鼠剤であるワルファリンに耐性を持つネズミが都市部で確認され、今後このような耐性個体群が日本各地に拡大することが予想される。本研究ではワルファリン耐性の機構を明らかにすることを目的とする。【方法】12日間ワルファリン含有餌を与え生存したものを耐性個体とした。ワルファリンの標的分子であるビタミンKエポキシドリダクターゼ(VKOR)をコードするVKORC1遺伝子を肝臓より単離し、その塩基配列を感受性個体と耐性個体およびデータベースの間で比較し、さらにそこから予想される各々のVKORC1のアミノ酸配列の2次構造を感受性個体と耐性個体の間で比較した。【結果】クマネズミではVKORC1の部分的クローニングを行った。耐性個体ではドブネズミの232番塩基に当たるTがCに置換しており、これに伴い76番アミノ酸に当たるLeuのProへの変異が確認できた。一方ドブネズミでは、VKORC1の蛋白発現部位の塩基配列は、感受性個体とデータベースは全て一致した。耐性個体はG120CとA268Tの置換が確認できた。前者は33番アミノ酸のArgをProに変異したが、後者はサイレントミューテーションであった。【考察】わが国のクマネズミおよびドブネズミに見られるようなアミノ酸変異はこれまでに報告例がなく、また耐性ドブネズミの原因として報告されている139番TyrのPheへの変異はなかった。そこで各々のアミノ酸配列の2次構造を予測し比較した結果、ドブネズミでは膜貫通回数が増える可能性が示唆されたが、クマネズミではそのような大きな構造的変化は予測されなかった。従ってドブネズミのワルファリン耐性はこのVKORC1の構造変化が関与していると考えられるため、その機能についても解析する。

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© 2007 日本毒性学会
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