抄録
【目的】新生児は、ビタミンK欠乏による出血性疾患、いわゆる「新生児出血性疾患」に罹患しやすい。この出血は、母親がフェノバルビタールやフェニトインなどの抗癲癇薬の投薬治療を受けるとその乳児にしばしば認められる。C.A. BouwmanらはWAG/Rijラット(germfree)を用いて2,2’,4,4’,5.5’hexachlorobiphenyl(CYP 2B inducer)投与による血液凝固時間の延長とビタミンK(Vt.K)との関連について報告している。そこで我々は、通常毒性試験に用いられるSD系〔Crl:CD (SD)〕SPFラットを用いて、フェノバルビタール(PB)の反復経口投与による血液凝固時間への影響を検討した。
【方法】PBの投与量は25、50、100及び150 mg/kg/日とし、8週齡のラットに2週間反復強制経口投与し、PT、APTT、血漿中フィブリノーゲン、Antithrombin III(AT-III)濃度、AST、ALT及びALP活性に加え、Vt.Kの関与する凝固因子(Facter II、VII、X)の減少を調べるためトロンボテスト(TT)を行った。同時に肝臓について総Cytochrome P450(P450)含量の測定とウエスタンブロット法でCYP2Bの発現を確認した。
【結果及び考察】PB投与により、P450含量及びCYP2Bの発現が増加し、凝固系パラメータではAPTT及びTTの延長がみられたことから、PB投与によるAPTTの延長にVt.Kが関与する凝固因子の減少が関係していることが示唆された。更に、トロンビンの阻害物質であるAT-III濃度の増加もみられた。