抄録
【目的】毒性試験では薬物投与に起因した摂餌量・体重減少がしばしば観察され、それに伴い臨床検査値や病理組織所見に2次的な変化が生じることが知られている。認められた変化が薬物の直接作用か否かを見極めることは非常に重要である。近年、毒性試験において、至適給餌(飽食の約75%量:雌;16 g/day、雄;22 g/day)条件下のラット[FO (Food-optimized)ラット]を用いることの有用性が数多く報告されている。摂餌量が減少した時の毒性試験パラメータに対する影響については、これまで飽食ラット(ALラット)を用いた報告に限定されており、このFOラットにおける報告はない。したがって、本実験ではFOラットを用いて毒性試験パラメータに対する摂餌量制限の影響を検討した。【方法】8週齢のCrl:CD(SD)ラットを対照群、75%群、50%群及び25%群に割り振った。対照群の雌雄にはそれぞれ16 g/day及び22 g/dayの固形飼料を2週間給餌し、その他の群には対照群の75%, 50%及び25%量に相当する12 g, 8 g及び4 g/day(雌)、ならびに17 g, 11 g及び6 g/day(雄)を給餌した。その間、症状観察、体重測定、摂餌量観察、眼科検査、及び臨床病理検査を行った。【結果】7日目に25%群の雌に死亡が認められた。赤色尿、活動性の減少、皮温の低下、及び皮毛の汚れが25%群の雌に観察された。体重減少が給餌制限に依存して全ての群で認められた。臨床検査では、赤血球系パラメータの増加、白血球および血小板の減少、血清グルコース・タンパク・脂質の減少、AST及びALTの軽微な増加、血清電解質異常、及び/もしくは尿pHの低下がいずれの群でも観察された。これら変化のほとんどは栄養欠乏、脱水もしくはタンパク異化の亢進に起因した変化であると考えられた。【結論】FOラットを用いた試験においても試験結果を評価する際には、摂餌量低下に起因した2次的変化を考慮に入れて評価することが重要であると考えられた。