主催: 日本トキシコロジー学会
近年の急速な技術革新により、ヒトの標的分子に対する特異性が優れたヒト化/ヒト抗体医薬品が難病治療の画期的な新薬として有望視されている。開発企業の使命はこれらの有用でかつ安全な新薬を逸早く医療現場へ提供し、人々の健康に貢献することにある。そのために、ICH-S6ガイドラインの基本的な考え方であるCase-by-Caseのアプローチにより、薬剤特性に応じた最も適切な評価系を用いて、スピーディーに臨床効果を検証することを常に念頭に置き開発を進めている。一方、昨年の英国におけるTGN1412治験での事故の教訓から、より注意深い非臨床安全性評価の必要性とヒト副作用予測技術の向上が問われている。 抗体医薬品には標的分子に対するブロッキング、シグナリング、ターゲティングなど多様な作用機序に応じたアプローチが必要であり、さらに近年では低分子化、2価特異抗体、PEG修飾、化学物質とのConjugateなど、従来のIgG型抗体とは異なる特徴を有する分子種が考案されており、これらの安全性評価に関する課題を熟慮することも重要である。 このような環境において、本ワークショップでは開発企業からの取組みとして、まず化学合成医薬品との全体開発戦略の違いおよび臨床移行に必要なパッケージの考え方を示し、動物種選択/交差反応性、免疫毒性・生殖発生毒性・安全性薬理の評価法およびトキシコキネティクスと中和抗体の評価の留意点などに関して紹介する。さらに、機能的代替(サロゲート)抗体もしくはヒト標的分子の遺伝子操作動物の有用性と課題などについても提言したい。