抄録
現在世界的に抗体医薬の開発がブームとなっている。その背景としては、 (1)ゲノム創薬の進展に伴い疾病関連遺伝子あるいは疾病関連タンパク質等が明らかとなりつつあること、(2)これら疾病関連生体高分子に特異的に作用する物質の開発にはモノクローナル抗体が適していること、(3)組換えタンパク質製造技術の進展を利用して、種差の壁を越えるキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体の製造法が確立したこと等があげられる。
このような抗体医薬を医薬品として開発する上での品質あるいは非臨床安全性評価について考慮すべきポイントについては、欧米では既にFDAあるいはEMEAからガイドラインが公表されている。また、これら抗体医薬を開発するにあたっては、さらにICHのバイオ医薬品の品質関係あるいは非臨床関係のガイドラインを参照することになる。
しかし、昨年明らかになった英国におけるTGN1412の事故は、抗体医薬の種類によっては、臨床試験を開始するにあたって、従来のガイドラインはヒトでの危険性を余地するに十分ではない可能性を示唆するものである。
そこで、本発表では (1)抗体医薬の品質および非臨床安全性評価が従来どのように行われてきたかをまとめるとともに、(2)従来の評価法は生理活性高分子に結合し、中和あるいは作用を阻害するようなタイプの抗体医薬では妥当と考えられること、(3)しかし今後開発が活発化するであろうアゴニスト抗体の場合は、作用メカニズムの検討を含めた、さらなる安全性への配慮が必要であることをまとめる。