抄録
化学物質の皮膚に対する非可逆的な損傷をもたらす性質を皮膚腐食性といい、その程度を明らかにすることで当該物質の安全性評価が行われてきた。従来、皮膚腐食性評価は動物実験により実施されてきたが、動物福祉の観点から種々の代替法が考案され、そのひとつとして開発されたヒト培養皮膚を用いた試験法がOECDテストガイドライン431(TG431)として公布された(2004年)。発表者らはヒト三次元培養表皮モデル「LabCyte EPI-MODEL」を開発し、それがヒト表皮に類似した構造を再現していることを示してきた。本発表ではLabCyte EPI-MODELを用いた皮膚腐食性試験をTG431に準じて実施し、その有用性を検討したので報告する。
まず、LabCyte EPI-MODELを用いて腐食性を確認すべき物質として文献等から21種類の化学物質を選択し、TG431に記載の評価基準についての妥当性を検討した。試験方法はTG431に従った。すなわち、LabCyte EPI-MODEL の培養細胞表面に被験物質を適用して所定時間暴露後、生細胞数を指標として皮膚腐食性を評価した。その結果、様々な特性を持つ化学物質の腐食性がin vivo評価とほぼ一致したことから、TG431に記載されている評価基準が適用可能であると判断した。
ついで、TG431に記載されている12化学物質(腐食性物質6、非腐食性物質6)を被験物質として、再現性の検討を行った。その結果、一部に不一致が見られたものの、施設内、施設間共にデータの再現性は大きな相違を認めなかった。さらに予測率について解析した結果、LabCyte EPI-MODELを用いた皮膚腐食性予測はin vivo腐食性分類と高い一致率を示し、OECD TG431に基づく皮膚腐食性試験法に適応しうる皮膚モデルであることが示唆された。