日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-144
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トキシコパノミクス
化学物質によるエピジェネティック制御機構障害の神経幹細胞をモデルにしたPercellome解析
*五十嵐 勝秀種村 健太郎中津 則之相崎 健一北嶋 聡菅野 純
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抄録

体細胞のゲノムDNAは基本的に同一であり、個々の細胞の特性は遺伝子発現パターンの違いによってもたらされる。その基盤と考えられるエピジェネティック制御機構が化学物質による影響を受ける事例が知られているが、その分子メカニズムには不明な点が多い。本発表では、細胞機能の成熟にエピジェネティック制御が必須である胎児神経幹細胞(マウス)に対するモデル化学物質(DNA脱メチル化剤5-アザシチジン(AzaC))を用いた検討について、別途構築した基盤データベースと比較して報告する。
胎生10.5日にAzaC 0.1, 0.3, 1mg/kgを経胎盤暴露し、胎生11.5日、14.5日に胎児終脳の遺伝子発現変化をPercellome手法を適用した網羅的遺伝子発現解析によって調べた結果、Stat1, Isgf3gなど、インターフェロンにより発現誘導される遺伝子群の発現上昇(インターフェロン応答)が認められた。他方、暴露後に分離した神経幹細胞の分化能力に変化が生じたのは、1mg/kg投与によってのみであった。また、DNAにメチル基を導入するDNA methyltransferaseの活性制御に関わるとされる遺伝子の発現がインターフェロン応答と共に上昇していた。成獣マウス肝で、ある化学物質が惹起するインターフェロン応答に相関してこの遺伝子の発現が上昇することを我々は別途見出しており、インターフェロン応答に深く関わることが示唆される。
これらの結果は、神経幹細胞にDNAメチル化安定化機構が備わっており、AzaCによるメチル化状態変化が固定される前に修復された可能性があることを示唆している。この機構の解明に向けて現在検討を進めている。
本研究は厚労科研費H14-トキシコ-001「トキシコゲノミクス手法を用いた医薬品安全性評価予測システムの構築とその基盤に関する研究」による。

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© 2007 日本毒性学会
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