日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: WS2-3
会議情報

毒性標的としての生殖細胞―遺伝毒性から生殖毒性へのブリッジング―
生殖細胞変異原物質のGHS分類
*森田 健
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)とは、国連が勧告している化学品の危険有害性の分類と表示に基づく情報伝達に関する世界的統一システムのことである。GHSでは、10項目の健康有害性について化学物質の有害性(ハザード)分類を行うが、その中には「生殖細胞変異原性」が含まれており、今や変異原性は、体細胞における「発がん関連影響」だけでなく、生殖細胞における「次世代への影響」にもあらためて焦点を当てつつある。GHSでは、ヒト生殖細胞における経世代突然変異誘発性に関する証拠の程度に応じた判定基準に基づき、生殖細胞変異原物質(GCM)を区分1A(既知ヒトGCM)、区分1B(ヒトGCMとみなすべきもの)および区分2(ヒトGCMの可能性があるもの)に有害性分類し、ラベルには、健康有害性シンボル、「危険」の注意喚起語、「遺伝性疾患のおそれ」等の有害性情報を表示する必要がある。混合物は、区分1のGCMが0.1%以上あるいは区分2のGCMが1.0%以上含まれる場合、それぞれ区分1あるいは区分2に分類する。判定基準の適合性に関しては、相反する知見の重み付けなど専門家判断が必要となる場合もある。一方、近年、GCMの検出には従来の“標準的”試験では十分ではない場合のあることが示されつつある。N-hydroxymethylacrylamideは、長期飲水投与優性致死試験においてのみ変異原性が確認され、生殖細胞特異的変異原物質の可能性が示唆されている。また、colchicineは、精母細胞より卵母細胞において顕著な異数性誘発がみられている。ヒトにおけるGCMのハザードおよびリスク評価には、性差や暴露期間・用量を考慮し、ヒト遺伝疫学の利用など、従来と異なるアプローチが必要と考えられる。
著者関連情報
© 2007 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top