日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: WS2-4
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毒性標的としての生殖細胞―遺伝毒性から生殖毒性へのブリッジング―
雄性生殖細胞に対する化学物質の影響
*下村 和裕
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抄録
生殖細胞は毒性影響が後世代に伝わる可能性があることから、重要な毒性標的の一つとされている。特に、近年、成人男性の精子数がこの50年間で半減しているとの報告に注目が集まるなど、雄性生殖細胞に対する毒性の世間に与えるインパクトは大きいものと考えられる。 雄性生殖細胞に及ぼす影響を評価する試験法として、医薬品毒性試験法ガイドラインでは受胎能及び着床までの初期胚発生に関する試験が示されており、交配検査を含む雄受胎能試験は第III相臨床試験の開始前に完了しておかなければならないとされている。また、一般毒性試験として実施される反復投与毒性試験では、雄の生殖器官重量の測定および病理組織学的検査が実施されており、遺伝毒性の領域では優性致死試験法が知られている。雄性生殖細胞に及ぼす影響の評価として、それぞれの分野からのアプローチには、目的、実験デザインおよび検査項目に特徴があり、必ずしも同一ではない。すなわち、雄受胎能試験ではリビドーを含めた交尾能力、授胎能力および精子の運動性など機能面に、フォーカスがあてられ、反復投与試験では精巣毒性として精巣、精巣上体および前立腺などの細胞レベルの形態学的変化を中心として観察が行われる。優性致死試験では生殖細胞における染色体異常誘発性の表現としての卵および胚の死亡を時期特異性とともに検討している。 今回の発表では、既知の雄性生殖細胞に対する毒性物質についてそれぞれの試験における成績とともに、評価する上での長所および短所または共通点を示し、各学問領域からのアプローチだけでなく、人における不妊のリスクを見据えた、総合的な視点からの雄性生殖細胞に及ぼす影響の評価の重要性を考えていきたい。
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© 2007 日本毒性学会
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