日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: CS4-2
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子どもの臨床試験に入る前に理解すること
小児免疫アレルギー疾患発症における環境と免疫の役割
*斎藤 博久
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抄録

乳幼児期にエンドトキシン量の多い非衛生的な環境で暮らすと、そうでない場合に比べてアレルゲンの感作率や花粉症罹患率が有意に低いことが疫学的に証明されている。この効果は、乳幼児期の免疫システム完成時において、TH1細胞を刺激するエンドトキシン量が少ない場合、TH1細胞と対立関係にあるアレルギー反応を促進するTH2細胞が異常に増殖するためであると考えられている。TH1細胞とTH2細胞の両者の増殖を抑制する細胞として制御性T(Treg)細胞の存在も知られている。最近、重症の喘息・アトピー性皮膚炎患者および患者と同程度のレベルのIgE抗体や好酸球を保有するがアレルギー自覚症状を欠く同年齢の健康人のFoxP3陽性Treg細胞数を比較する機会を得、Treg細胞数は重症患者において有意に低値を示すことを見いだした。FoxP3陽性Treg細胞数には2種類存在する。そのうち、常在性Treg細胞は自己抗原に反応するので、アレルギー疾患対アレルギー体質保有健康人において差違がみられたのは獲得性(a)Treg細胞であろう。2つの群ではIgE値、好酸球数のみならずインターフェロンγ値も同程度であった。したがって、aTreg細胞と拮抗しアレルギー疾患発症を規定するのはTH1細胞でもTH2細胞でもなさそうである。最近、第3のヘルパーT細胞として炎症促進効果の強いインターロイキン17を分泌するTH17細胞が同定された。TH1細胞、TH2細胞、Treg細胞のいずれとも対立関係にあるTH17細胞がアレルギー疾患発症に関係している可能性が想定される。あるいは、TH2細胞の中でも、アレルギー疾患患者では炎症促進性サイトカインTNFを分泌するTH2inf細胞が増加しているのかも知れない。TH1細胞とTH2細胞のバランスはアレルギー体質の獲得に関係している。しかし、アレルギー疾患の発症には、Treg細胞と炎症性T細胞のバランスが重要であると想定される(参考文献「アレルギーはなぜ起こるか」ブルーバックス)。

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© 2008 日本毒性学会
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