[目的]ナノ物質は高機能性とともに刺激性も増進し、呼吸・消化器系を通して体内侵入・拡散する可能性がある。本研究では新たに開発した方法も含め、数種の方法で全身動態を可視化し検討した。
[方法]1.軟組織埋入試験:ラット軟組織に1週間~最長2年間まで埋入後、病理組織像を観察した。
2.体内動態試験:Ti, Fe, Ni, Pt, TiO
2, CNT, ポリ乳酸等の微粒子を分散後、マウスへ尾静脈注入、一部については経口投与した。下記MRI法を除き開腹または切片を作製後、全身分布観察、あるいは肺・肝臓・脾臓・腎臓を摘出して臓器間比較を行い、体内循環の経時的変化を可視化した。また臓器内含有量をICP化学分析し比較した。
(1)XSAM(X線走査型分析顕微鏡)元素マッピング法:収束X線プローブを照射し、試料から発光した蛍光X線をマッピングし元素分布像を得た。(2)レーザーアブレーション/マススペクトルマッピング(レーザーマス)法:水溶化したフラーレン(C
60)を投与したラットの各臓器の切片に、レーザービームを照射し蒸散した分子をマススペクトルにかけ、2次元質量分布像を得た。(3)MRI法:粒径11nmのFe
3O
4磁性微粒子の体内循環を経時的に3次元造影した。(4)蛍光顕微鏡法:蛍光(FITC)ラベリングしたCNTおよびポリ乳酸微粒子を投与後、蛍光観察を行った。
[結果](1)XSAMマッピング像から、30nmTiO
2は投与後数分で肺に到達し、肝臓へは数時間、脾臓へは数十時間かけて次第に到達した。Ptでは投与ごく初期から脾臓に高濃度で検出され、臓器別では肝臓で最も多量に存在した。(2)水溶化フラーレンはレーザーマス法では脳からは検出されず、肝臓と腎臓から検出された。(3)Fe
3O
4粒子は肝臓、腎臓に濃縮したMRI像を示した。(4)肝臓からCNT蛍光像が検出された。
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