抄録
医薬品開発においてQT間隔の延長を指標に催不整脈のリスクを評価することが重要とされている。これまでに心電図におよぼす影響を前臨床試験で評価する試験系として、モルモットやイヌを用いたハロセン麻酔モデルでのQT間隔の変化およびイヌを用いたアドレナリン不整脈モデル等の評価報告がなされている.一方,サルでの報告はほとんどない。そこで、我々はカニクイザルを用いたハロセン麻酔モデルおよびアドレナリン不整脈の実験を行った。
体重3 kg以上のカニクイザルを用い、チオペンタール25 mg/kgの静脈内投与による導入後、ハロセン・笑気の混合ガスで麻酔を維持し,心電図を測定した。心電図が安定した後、ソタロール,テルフェナジンを静脈内に単回投与し、心電図のQT間隔に及ぼす影響を検討した.また,薬物の投与前と投与後にアドレナリンの0.1から10 μg/kgを公比3で静脈内投与し、不整脈を発現させる.不整脈の発現率から,発現率50%のアドレナリン用量を求めた。なお,実験中は終始,血圧および心拍数も同時に測定した.
以上の結果,ソタロール,テルフェナジンの単回静脈内投与により,QT間隔の延長が観察された.また,テルフェナジンの単回静脈内投与によりアドレナリン催不整脈閾値が低下した.今回の実験で,カニクイザルでもQT間隔の延長およびアドレナリン不整脈閾値の低下を確認することができた.