抄録
医薬品の開発において、以前は非臨床試験ではほとんどの場合で成熟動物を用いて試験が行われており、幼若動物を用いた試験はあまり行なわれていなかった。しかし、近年、小児適応医薬品の開発の重要性が注目されるようになり、非臨床試験において幼若動物を用いた試験を実施する頻度が高まっている。このことから、FDAおよびEMEAからは幼若動物試験法ガイダンスまたはガイドライン案が発表された。しかし、これら指針には試験を実施する際の考え方や試験デザインについては記載されているが、具体的な実験方法についての記載は少ない。
幼若動物試験では場合により、生後1~7日齢のラットから投与を開始し、採血を行ない血中薬物濃度を測定することもある。幼若動物は身体が小さく、脆弱なため、実験操作は困難をともない、わずかな操作の過誤が試験成績に悪影響を及ぼす可能性が非常に高い。また、成熟動物で用いられている手技および器具をそのまま幼若動物に使用することは不可能な場合も多い。幼若動物を用いた試験には、幼若動物のための実験技術および器具の開発が必要とされることもある。このように実際に幼若動物試験を実施している研究者は多くの技術的問題点に直面しており、何らかの解決策を模索していると思われる。
このセッションでは複数の施設の研究者から、投与、採血、群分け方法などについて技術、器具およびデータを紹介して頂く予定である。投与については、経口および静脈内投与について、保定方法、投与可能な薬液の容量、ゾンデや注射針などの器具の形状について、採血では部位、止血方法、採血量が動物に及ぼす影響、さらに群分けではフォスタリングのタイミングなどについて示して頂く。その提示をきっかけとして、会場に参加の個々の研究者の持つノウハウを発言していただき、幼若動物試験における実験技術の向上を共有できればと考えている。