日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-12
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2.発がん
タバコ副流煙によるリン酸化Histone H2AXの誘導
*豊岡 達士伊吹 裕子
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抄録
[目的] タバコ煙中には、発がん性物質を含む5000種類以上の化学物質が存在し、喫煙による肺がんリスク上昇は疑う余地がない。一方、喫煙者が曝露されるたばこ煙 (主流煙)と同様に、非喫煙者が曝露される環境たばこ煙 (主に副流煙)にも発がん性物質が含まれており、副流煙曝露 (受動喫煙)による健康影響についても近年関心が高まってきている。しかし、実際に副流煙がどの程度肺がんリスクを上昇させるのか、また細胞レベルでどのような毒性を示すのかについては未だ不明なところが多い。本研究では副流煙による細胞毒性の一端を明らかにするため、 DNA二本鎖切断 (DSBs)に伴って誘導されると考えられている、histone H2AXのリン酸化がタバコ副流煙によって誘導されるか否か検討した。
[方法] 市販タバコS (タール: 14mg, ニコチン: 1.2mg )を5本燃焼させ、その副流煙を吸引、培地100ml中に捕集した。前述のように作製した副流煙 (cigarette sidestream smoke: CSS)サンプルを100%濃度とし、必要に応じて希釈を行い、肺上皮細胞A549に作用させた。各作用時間後 (~24h) に、細胞生存率の検討、細胞内活性酸素種量の定量、DSBs及びリン酸化H2AXの検出を行った。
[結果と考察] CSSはA549細胞に対して、濃度及び時間依存的に細胞死を誘導した。CSSは短時間の内から、作用濃度依存的に劇的なH2AXのリン酸化を誘導することが判明した。またこのとき、DSBsを生成することがパルスフィールドゲル電気泳動法によって確認された。細胞内活性酸素種量を定量した結果、CSS作用による明らかな増加が認められ、さらにCSSが誘導する細胞生存率の低下及び、H2AXのリン酸化は抗酸化剤N-アセチル-L(+)-システインによって抑制された。以上より、CSSは細胞内活性酸素種量を増加させ、H2AXのリン酸化、すなわちDNA損傷の中でも最も重篤な損傷であるDSBsを誘導し、細胞毒性を発揮しているものと考えられた。
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© 2008 日本毒性学会
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