日本トキシコロジー学会学術年会
第35回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: O-22
会議情報
4.毒性機序II (腎、免疫、造血、脳神経)
尿中Kidney injury molecule 1 (Kim-1) 蛋白量測定の腎毒性評価における意義
*永田 雅史望月 潔隆小野田 順二辻 敏永六嶋 真希子殿村 優福島 亮藤澤 可恵近藤 千晶上原 健城荒木 明子柳本 徹岡田 学丸山 敏之
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キーワード: Kim-1蛋白量, 腎毒性
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抄録
近年,腎尿細管壊死のバイオマーカーの一つとして,尿中のKidney injury molecule 1 (Kim-1)の有用性が示されている.例えば,既知腎毒性物質であるcisplatinをラットに投与した場合,翌日には尿中のKim-1量が3~5倍増加したのに対して,従来の腎障害マーカーである血漿クレアチニン,BUN,尿中N-acetyl-β-glucosaminidase(NAG),グルコースや蛋白量ではそのような変動は見られなかった(Am J Physiol Renal Physiol 290: F517-F529, 2006).我々は尿細管壊死を惹起する化合物をラットに投与し,腎臓でのKim-1遺伝子の発現変動を定量リアルタイムRT-PCR法により調べた結果,Kim-1遺伝子が1000倍強に発現上昇し,さらに腎障害を示唆する病理所見のグレードと強く相関していたことから,尿細管壊死を判定する遺伝子マーカーとして有用であることを既に報告した(2007年度日本トキシコロジー学会学術年会).このことから我々は,非侵襲的に採取可能な尿中のKim-1蛋白量を測定すれば化合物の腎毒性評価に有用であろうと考え,いくつかの検討を行った.既知腎毒性物質をラットに短期間投与したところ既存の腎障害マーカーには変動の見られない投与後24時間といった早期であっても尿中Kim-1蛋白量の増加が確認できた.また尿中Kim-1蛋白量の増加の程度は,化合物のもつ腎毒性の強さに比例していた.さらに尿中Kim-1蛋白量の変動は,腎皮質内のKim-1遺伝子発現量とその後の病理組織学的検査による腎尿細管壊死および再生などの所見と一致していた.これらの事から,化合物の腎毒性を評価するうえで尿中Kim-1蛋白量の測定は有用な評価項目であることが明らかになった.
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© 2008 日本毒性学会
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