抄録
【目的】薬物による心室筋再分極時間の延長(薬剤誘発性QT延長作用)は、不整脈を発症させ、突然死を引き起こす可能性があることから、近年、非臨床でのQT延長評価が重要視されている。本実験では、灌流モルモット心臓標本を用いて陽性及び陰性対照薬のQT延長作用を評価し、本試験系のQT延長評価における有用性を示した。
【方法】モルモット(Crj:Hartley, 雄)を麻酔後, 心臓を摘出し, ランゲンドルフ法により検討した。心臓の右心房及び心尖部に心電図測定用電極を, 左心室外膜に単相性活動電位(MAP)測定用の電極を, 右心房部にペーシング用電極を接着した。本評価系における適切なQT補正式を求めるため、QT間隔への作用を示さない徐脈薬zatebradine適用下で、段階的にペーシングを行い、幅の広いQT/RR関係から補正式の補正能について検討した。また、陽性対照薬(moxifloxacin及びE-4031)及び陰性対照薬(zatebradine及びverapamil)について、低、中、高用量の順に累積的にそれぞれ約15分間処置し、洞調律下の補正QT間隔(QTc)及びペーシング刺激下(Cycle length: 250 ms)のMAP持続時間(MAP90)を測定した。
【結果及び考察】一般的な補正式ではFridericiaがBazettの補正式と比較して良好な補正能を示した。陽性対照薬ではQTc及びMAP90の延長が認められ、QT延長作用が検出された濃度は、臨床においてQT延長作用を示すときのフリー体濃度と同程度であった。一方、陰性対照薬ではQTc及びMAP90に変化は認められなかった。以上より、本試験系は臨床予測性の高いQT延長評価系であることが示された。