日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S1-3a
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市販前から市販後までに一貫した安全性評価/ファーマコビジランスによる臨床でのリスク最小化へのチャレンジ 非臨床/トキシコロジストは,安全性医師と連携して副作用データをどう読むか
セーフティーサイエンスにおけるヒト培養細胞の利用
*菅井 象一郎岩井 久和
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抄録
特異体質性臓器障害をはじめとする医薬品の市販後の副作用は、その予測が従来のスタンダードな毒性試験では困難なことが多い。このような状況においてヒトの副作用研究における非臨床からのアプローチとして、動物の病態モデルや培養細胞を用いたin vitro実験系の積極的利用が今後更に求められると考える。一方、これらの実験系では、その背景値や得られた結果のヒトへの外挿性は必ずしも十分なものとは言えない。特に培養細胞をヒトの副作用研究に用いる場合は、細胞種の選択について十分検討することと同時に、細胞の培養条件・方法についても最適化を図る必要があると考える。また、薬物に対するヒトと動物の細胞の反応の違いも考慮すべきであり、培養細胞を用いたin vitro実験系の結果をin vivo更にはヒトに外挿する場合は、その限界を十分把握することが求められる。以上のような背景を踏まえ、この講演では、初めに医薬品の特異体質性臓器障害の想定メカニズムの一つであるミトコンドリア毒性の評価におけるin vitro実験系の可能性を述べる。また、スフェロイド細胞の様な今後有用と考えられる実験系を検証したい。さらに、特異体質性臓器障害を予測する上で、特にヒトと動物の細胞の違いについて検証したい。特異体質性臓器障害のリスクファクターとしては、患者さんの遺伝的要因、体質、生活習慣、既往症、年齢、性差などが挙げられるが、これらの要因を個々に解析する上で培養細胞を用いる実験系で将来どのようなことが期待されるか、また、細胞を実験に供する上でその提供ルートを如何に確保するかという点についても討議したい。セーフティーサイエンスにおいてヒトの細胞を有効利用できれば副作用メカニズム解明やリスク低減に向けて有用な情報が得られる可能性がある。
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© 2009 日本毒性学会
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