日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S2-2
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日本薬理学会合同シンポジウム ES細胞およびiPS細胞を利用した薬理学,トキシコロジー研究とその将来
ES細胞およびiPS細胞を利用した薬理・トキコロジー研究とその将来
*多田 高
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抄録

成人の体からの細胞が培養シャーレの中で万能細胞(多能性幹細胞)に直接生まれ変わるリプログラミングマジックは、多くの研究者に驚きを、患者は新たな治療法到来の現実性を感じる事となった。この人工多能性幹細胞(iPSC)と呼ばれる万能細胞は、胚性幹細胞(ESC)と非常によく似た特性を持つ。しかし本来多能性のある胚細胞から樹立されたESCと多能性を失った体細胞をリプログラミングして樹立されたiPSCが全く同じ性質を持つか注意深く検討する必要がある。iPSCの標準はESCであり両研究のバランスよい発展が医学・薬学への貢献に重要である。京都大学の山中研究室から2006年にマウスの2007年にヒトiPSCの樹立が報告されてから、その樹立方法の改良により遺伝子導入を伴わないiPSC樹立が可能になり、現在は遺伝子操作によらない化学物質によるiPSC樹立に向け研究が進んでいる。しかし、技術開発が進むにつれ樹立効率の低さと体細胞の入手方法が臨床応用の際の課題としてあげられている。これまでの基礎研究で用いられてきた胎児繊維芽細胞(入手困難)と同様の頻度でiPSCが樹立可能なプライマリー組織細胞(容易に入手可能)の同定が必要である。一方、2008年には、ラットESCの培養条件が確立されESCとiPSCを扱うことが可能となった。ラットはマウスよりも薬理・トキコロジーでは汎用されている哺乳類であり、今後疾患モデルラットの作製と応用が急激に広がる可能性がある。この様に、iPSCの出現は理学・医学のみならず、薬学・工学を含む様々な分野への貢献に向け世界規模での展開を見せている。同時に、早い研究展開について行けない行政制度や倫理の障害が危惧されている。

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© 2009 日本毒性学会
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