日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S2-3
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日本薬理学会合同シンポジウム ES細胞およびiPS細胞を利用した薬理学,トキシコロジー研究とその将来
iPS細胞の分化と薬理学研究への応用
*大石 一彦
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キーワード: iPS細胞, 分化
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抄録
人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPS cell)は、体細胞に数種類の遺伝子を導入することで誘導され、胚性幹細胞(embryonic stem cell: ES cell)と同様な性質を持ち、さまざまな臓器や組織の細胞に分化できる多能性幹細胞である。このiPS細胞は、患者自身の細胞から作製でき、分化多能性を維持したまま、無制限に増殖可能であるため、再生医療に応用可能なES細胞に代わる細胞資源として期待されている。 一方で、このiPS細胞は、細胞移植を前提とした臨床応用以外に、疾患発症の原因解明や創薬などの薬理学的研究への応用も期待されている。cell-basedの創薬スクリーニングは、従来ヒト初代培養細胞や細胞株が用いられていたが、ヒトiPS細胞から分化した体細胞を利用すれば、よりヒトの組織を反映した品質の安定したcell-based assayが可能となる。また、疾患特異的iPS細胞を患者自身の細胞から作製し、正常iPS細胞と比較解析することにより、これまでは困難であった難治性疾患の原因解明が可能となり、新たな創薬ターゲットの発見につながる。さらに、iPS細胞から誘導した体性幹細胞・前駆細胞を利用して、患者自身の体性幹細胞をターゲットとした再生薬の開発も期待できる。iPS細胞の樹立により、細胞の初期化や分化制御の分子機構が詳細に解明されつつあり、低分子化合物を用いた制御も可能となってきている。細胞移植に頼らない低分子化合物による同所性再生にも可能性が出てきた。 我々は、体性幹細胞・前駆細胞やiPS細胞を用いて、本来の組織の機能を反映した、また、機能評価に応用可能な再生組織の構築に取り組んでいる。本シンポジウムでは、この機能再構築系を中心とした我々の基礎的研究を紹介し、薬理学的研究への応用へ向けた展望と課題について述べてみたい。
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© 2009 日本毒性学会
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