日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S5-4
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In Silico手法による化学物質の有害性評価の試み
In silico手法による化学物質のヒト健康影響の評価
*林 真
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キーワード: In silico, 化学物質
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抄録

化学物質審査規制法における新規化学物質の審査では、ヒト健康影響評価に関するスクリーニング目的の試験として、エームス試験、染色体異常試験及び28日間反復投与毒性試験が行われている。エームス試験と染色体異常試験については、化学構造からその活性を予測ためのソフトウェアがいくつか市販されている。国立医薬品食品衛生研究所は、厚生労働省のプロジェクトにおいて、これらのソフトウェアの外部バリデーションを実施し、予測の観点が異なる複数のソフトウェアの予測結果を組み合わせることにより、単独で用いる場合と比較し予測精度が向上することを明らかにした。一方、毒性発現の全身症状を評価する反復投与毒性試験は、in vitro試験と比較し毒性発現のメカニズムが極めて多彩で複雑である。従って、化学構造と毒性とを直接的に関連付けることは容易でなく、反復投与毒性を対象とした実用的なin silico評価手法は今のところ開発されていない。化学構造をベースに試験が行われていない化学物質の反復投与毒性を推定するためには、体内分布、代謝産物、毒性作用機序など、毒性の内容やその強度を支配する種々の要因をケーズバイケースで考慮したエキスパートジャッジが必要になる。このようなエキスパートジャッジを支援するためNEDO『構造活性相関手法による有害性評価手法開発』プロジェクトでは、反復投与毒性試験報告書の詳細、毒性作用機序や代謝情報等を統合的に集積した知識情報データベースや、知識情報データベースの情報を用いて化学構造から反復投与毒性を推定することを支援するシステムの開発を行っている。本発表ではプロジェクトのこれまでの主要な研究成果について報告する。

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© 2009 日本毒性学会
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