抄録
安全性薬理コアバッテリー試験に関するガイドラインには無麻酔・非拘束動物で実施することが望ましいとされており,呼吸機能測定に関しては一般的にラットのWhole body plethysmograph法(WBP法)で行われている.また,サルの呼吸機能測定に関してはストレスの大きい拘束下に採取した動脈の血液ガスを分析する方法が殆どであった.そこで我々はストレスが少なくWBP法で呼吸機能を測定出来る呼吸機能測定用チャンバー(三菱化学安科研・BUXCO社共同開発)を開発し検討を行ってきた.今回,我々はサルおよびラットの呼吸機能をWBP法を用いて測定し,得られた結果を比較し,サルの有用性を検討した.
サルは体重3.0kg以上の雄性カニクイザルを用いた.呼吸機能測定用チャンバーにサルを収容しWBP法で呼吸数および1回換気量を連続測定し,分時換気量も求めた.同時にテレメトリー法にて血圧,心拍数及び心電図の測定も行った.
ラットは体重200g以上のCrl:CD(SD)雄性ラットを用いた.ラットをチャンバーに収容しWBP法で呼吸数および1回換気量を連続測定し,分時換気量も求めた.その結果,サルではモルヒネ塩酸塩の10mg/kg皮下投与後,呼吸数は僅かに減少し,1回換気量および分時換気量は持続的に減少した.ラットでは呼吸数,1回換気量および分時換気量に変化はなかった.なお,我々の背景データではラットにおけるモルヒネ塩酸塩の呼吸機能抑制作用は皮下投与では100mg/kgでも得られず,300mg/kg の60分静脈内持続投与にて得られた.結果,モルヒネ塩酸塩においてはサルのほうが呼吸機能における感受性が高い結果となった.なお,サルでは同時にテレメトリー法で血圧,心拍数及び心電図の測定も出来ることから,呼吸機能測定用チャンバーを用いれば無麻酔・非拘束サルで呼吸系と心血管系の同時測定が可能である.