日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-9
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
ラット急性肝障害モデルにおける血中osteopontinの変動
*松山 拓矢伊藤 和美熊谷 和善谷本 友恵北島 多佳子齊藤 航安藤 洋介矢本 敬寺西 宗広三分一所 厚司真鍋 淳
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抄録
肝におけるOsteopontin (OPN) 発現の上昇が複数の肝障害モデル動物で報告されており、OPNは新たな肝バイオマーカーとなることが期待されるが、ラット急性肝障害モデルにおける血中OPNの変動に関する報告は少ない。そこでラット急性肝障害と血中OPNの変動についての知見を得るため、急性肝障害モデル化合物であるconcanavalin A (Con A、20mg/kg、i.v.)、monocrotaline (MCT、300mg/kg、i.p.) およびD-galactosamine (GalN、300mg/kg、i.p.)を雄性F344ラットに単回投与した。投与8時間後に血液化学的検査、ELISA法による血中OPN濃度測定、肝の病理組織学的検査および抗OPN抗体を用いた免疫組織学的検査を実施した。その結果、全ての化合物の投与群においてALTの上昇および肝細胞壊死がみられ、肝障害が惹起されていた。血中OPN濃度はCon AおよびMCT投与群で対照群に対して有意に上昇した。この時、免疫組織学的検査において、対照群に比してOPN陽性細胞の増加が認められたことから、Con AおよびMCT投与による血中OPN濃度の上昇は肝に由来すると考えられた。一方、GalN投与ラットでは血中OPN濃度は上昇せず、OPN陽性細胞も増加しなかった。以上より、ラット急性肝障害時のOPNの変動は血中で感知可能であることが示された。また、血中OPNの上昇は肝障害時に必ず伴うものではないことから、組織障害により血中に漏出する肝逸脱酵素とは異なり、肝障害メカニズムを考察する上でユニークな肝バイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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© 2009 日本毒性学会
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