日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-30
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臓器毒性,代謝,毒性試験法等
日本白色種ウサギにみられた雄起因の遺伝的生殖器奇形とその機能
*山本 大谷 栄之介涌生 ゆみ宮崎 智成星野 信人松浦 郁夫
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抄録
【背景及び目的】 我々は第35回本学会で、日本白色種ウサギ(KBL:JW)の特定の種雄に起因した胎児の生殖器異常(精巣及び卵巣の低形成,停留精巣)について発表した。ヒトの停留精巣などは、成長が進むにつれ正常な機能を獲得することが報告されており、発育遅延が主な要因と考えられている。そこで今回、特定の種雄から作出したF1動物を成熟するまで飼育し、生殖器の機能及び形態を検査することで、胎児で観察された形態異常が発育遅延によるものかどうかを検討した。 【材料及び方法】 特定の種雄の精液で人工授精を行った雌6例から、自然分娩にてF1動物を作出した。F1動物を哺育後、生後20週齢以降に精子検査を実施するとともに、異常がみられた個体について生殖器の肉眼及び病理組織学的検査を行った。 【結果】 精子検査の結果、乏精子症や無精子症の個体がみられ、3例の母動物のうち4例のF1動物で生殖器の形態異常が認められた。乏精子症の動物は、精巣、精巣上体及び副生殖腺の配置は正常であったが、いずれの臓器も小型であった。病理組織学的検査の結果、ほとんどの精細管が未成熟であり、精巣上体及び精嚢も未熟な組織であった。無精子症の動物では、左側の停留精巣が認められ、停留精巣、陰嚢内精巣とも小型であった。精巣上体は精巣の一部に付着しており、嚢胞が認められた。病理組織学的検査の結果、精巣及び精巣上体は未熟な組織であり、嚢胞は遺残した中腎管であった。その他、外生殖器形態異常(尿道下裂)が1例で観察され、肉眼的には子宮及び卵巣様の内生殖器を有していたが、病理組織学的検査の結果、卵巣様の臓器は未熟な精巣組織であった。 【結論】 特定の種雄に起因した胎児の生殖器異常は、発育遅延によるものではなく、生後も回復することのない異常であることが判明した。雄起因の奇形は極めて稀であり、今後はその発現機序についてさらに詳細な検討を行う予定である。
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© 2009 日本毒性学会
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