主催: 日本トキシコロジー学会
【目的】従来の7週齢ラットを用いた中期イニシエーション活性検索法では、被験物質投与前に高い肝細胞増殖活性を誘導するために肝部分切除等の細胞増殖刺激を行う必要があり、細胞増殖刺激の煩雑な手技、個体への負荷および個体差等が解決すべき問題であった。今回細胞増殖刺激を行わない4週齢ラットを用いた中期イニシエーション活性検索法の有用性を検討した。 【方法】[実験1:肝細胞増殖活性および肝代謝能]4、4.5、8週齢のF344雄ラットに100 mg/kgのBrdUを腹腔内投与して肝臓を採材し、各週齢のCytochrome P450(CYP)蛋白量、CYP酵素活性(CYP1A、CYP2A、CYP2B、CYP2C、CYP2E、CYP3A)、ならびに抗BrdU免疫染色によるS期肝細胞率を調べた。[実験2:中期イニシエーション活性検索法]4週齢のF344雄ラットに大腸発がん物質である1,2-dimethylhydrazine(DMH)を単回経口投与(4, 16 mg/kg)または4日間反復経口投与(1, 4 mg/kg)し、プロモーション処置として初回DMH投与後1週間からの2-acetylaminofluoreneの2週間混餌投与および四塩化炭素の単回経口投与を行った。また、DMH投与後にプロモーション処置を行わない群も設定した。初回DMH投与後4週間に肝臓を採材し、免疫組織学的手法により、肝臓の前がん病変である胎盤型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-P)陽性巣の数および面積を求めた。 【結果およびまとめ】実験1より、4および4.5週齢は8週齢と比較して、S期肝細胞率が約3倍高く、CYPの蛋白量ならびに酵素活性はほぼ同じであったことから(CYP2Cを除く)、4週齢ラットは8週齢と同様な肝代謝能を有しながら高い細胞増殖活性を有していることが示された。実験2の結果、DMHの単回投与群および4日間反復投与では溶媒対照群と比較してGST-P陽性巣の有意な増加が認められた。これらより、細胞増殖刺激を行わない4週齢ラットを用いた中期イニシエーション活性検索法の有用性が示された。