日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-88
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優秀研究発表賞応募演題
カドミウムにより過剰蓄積したp53によるアポトーシス誘導
*徳本 真紀藤原 泰之長谷川 達也瀬子 義幸永瀬 久光佐藤 雅彦
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キーワード: カドミウム, p53
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抄録

【目的】我々は、カドミウム (Cd) で処理したラット腎近位尿細管上皮(NRK-52E)細胞において、p53が過剰蓄積した後に、細胞毒性が出現することをすでに本学会にて報告した。p53はアポトーシス誘導因子であることから、今回、Cdによるアポトーシス誘導とp53のリン酸化をNRK-52E細胞を用いて検討した。 【方法】NRK-52E細胞をコンフルエントまで培養後、2および5 µMのCdで24時間処理した。非特異的な細胞毒性をLDHアッセイおよび形態学的観察により評価した。細胞中のCd濃度をICP-MSにより、p53タンパク質濃度をELISA法によりそれぞれ測定した。また、アポトーシスは断片化DNAの検出により確認し、リン酸化p53はWestern blot法により検出した。 【結果および考察】2および5 µMのCd処理によって濃度依存的に細胞毒性が出現し、細胞中のCd濃度もこれと同様に上昇した。細胞内p53濃度もCd処理濃度に依存して高値を示した。なお、Cd 12時間処理後の細胞内p53濃度を測定したところ、両Cd処理群でともにp53濃度の顕著な増加が認められた。アポトーシスは両Cd処理群で認められ、Cd 5 µM処理群では多くの断片化DNAが検出された。また、p53が活性化してアポトーシスを誘導するためにはリン酸化されることが必要であるが、Cd処理濃度に依存してリン酸化p53 (Ser 15) が増加することが確認された。以上の結果より、Cdは、NRK-52E細胞内でp53を過剰蓄積し、その一部がリン酸化されて活性型となってアポトーシスを誘導することにより細胞毒性を引き起こす可能性が示唆された。また、Cdによるアポトーシスは細胞内p53蓄積量に依存して引き起こされると考えられる。

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© 2009 日本毒性学会
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