日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-87
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優秀研究発表賞応募演題
ラット肝二段階発がん促進過程における鉄ないし銅関連分子の発現局在
*水上 さやか嶋田 悠子市村 亮平鈴木 輝政松本 明渋谷 淳三森 国敏
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抄録

【目的】鉄や銅は生体内の酸化性ストレスの生成に関与し、これらの蓄積異常と発がん性の関連は知られている。本研究では、内因性の鉄や銅の発がんに対する関与を検討する目的で、ラットの肝発がん促進時でのこれら必須元素の輸送や代謝に関与するトランスフェリン受容体(TfR)、セルロプラスミン(Cp)、メタロチオネイン(MT)について、誘発された肝前がん病変及び腫瘍での発現局在を検討した。【方法】6週齢の雄性F344ラットを用いて肝中期発がん性試験法に従ってポストイニシエーション期でのフェノバルビタール(PB)、フェンベンダゾール(FB)、ピペロニルブトキサイド(PBO)、チオアセタミド(TAA)の混餌投与を6週間行い、FB投与群では57週間投与を継続して肝腫瘍を誘発し、肝臓について肝前がん病変マーカーであるGST-Pとともに、TfR、Cp、MTの免疫組織化学的な局在解析を行った。【結果】FB、PB、PBOの6週間投与で誘発されたGST-P陽性巣にTfRに共陽性を示すものが出現し、FB、PBOでGST-Pとの一致性がDEN単独群より増加したが、TAA投与では逆にGST-P陽性巣に一致したTfR陰性巣の形成が増強した。また、CpはGST-P陽性巣に一致して陰性巣を形成し、各物質の発がん促進により一致性が増強した。FB誘発腫瘍は全てGST-Pに陽性を示し、変異肝細胞巣に比べTfR陽性及びCp陰性所見の一致率が高かった。一方、MTは島状の陽性巣を形成したが、GST-P陽性巣及び腫瘍とは共発現しなかった。【考察】TfRは発がん物質によりGST-P陽性巣での局在性が逆転し、発がんに伴う二次的な発現変化を示唆した。Cpは発がん促進に応じてGST-P陽性巣に陰性を示す巣が増加し、腫瘍でも高い陰性率を示したことから、これらの病変では発がん促進によって鉄の酸化を伴う酸化性ストレスが特異的に減少しているか、あるいはストレスに関わらずCpの欠落に伴い抗酸化作用が減少している可能性が示唆された。一方、MTは肝発がん促進には寄与しないと考えられた。

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© 2009 日本毒性学会
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