日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-108
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優秀研究発表賞応募演題
マウスTNBS急性大腸炎モデルの病態プロファイリング
*永岡 真Radi ZaherKhan Nasir濵田 悦昌
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抄録

炎症性腸疾患(IBD)はヒト腸における慢性の炎症性疾患であり,その病変部位および病理組織学的特徴からクローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)に大別される。CDおよびUCは,サイトカインプロファイルの面から,それぞれTh1およびTh2タイプを示す。IBDの病因として,ヒトおよび種々の大腸炎モデルでの病態解析の結果から,腸内細菌叢や遺伝的素因などの複合的関与が示唆されているが,発症機序の全貌はいまだ明らかではない。
TNBS大腸炎はマウスに2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を直腸内投与することにより作成され,ヒトCDの病態に類似した特性を示すと言われている。TNBSは種々のタンパク質と非特異的に結合するハプテンであるため,TNBS大腸炎では複数の免疫応答に基づき腸炎が生じると考えられているが,未だ不明な点も多い。本研究では,マウスに急性のTNBS大腸炎を発症させ,免疫学的および病理組織学的観点からその病態を詳細に解析した。
6週齢のBALB/cマウス(雌)にTNBSエタノール溶液を単回直腸内投与して急性大腸炎を発症させた。投与4日および6日の剖検までは体重を毎日測定し,剖検後には消化管各部位における炎症レベルおよび各種サイトカインレベルを測定した。その結果,生理食塩水投与群および溶媒投与群と比較してTNBSエタノール溶液投与群では,投与3日まで体重が減少し,その後回復する傾向を示した。ヒトCDとは異なり,炎症レベルは大腸(直腸)で高く,投与4日でピークに達し,また,組織中のIL-1β,IL-12p70,IL-6,KC,IL-10,TNFαの各サイトカインレベルと正の相関を示す傾向が認められた。
発表に際しては,免疫組織化学的手法による病態のより詳細な解析結果も紹介する予定である。

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© 2009 日本毒性学会
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