抄録
【目的】Superoxide dismutase 2 (SOD2) はミトコンドリアに発現し、スーパーオキシドの解毒を担っている。様々な薬物がスーパーオキシド産生を増加させることが知られており、これが肝障害を引き起こす一因と考えられている。本研究では、SOD2をノックダウンすることにより、酸化ストレスよる肝障害性を高感度に検出する系を構築することを目的とした。
【方法】SOD2をノックダウンするアデノウイルス (AdSOD2-shRNA) を作製し、ラット肝由来BRL3A細胞、または、F344ラットに感染させ、SOD2酵素活性値の減少を確認し、薬物による肝障害性への影響を検討した。
【結果および考察】BRL3A細胞へのAdSOD2-shRNA感染により、SOD2 mRNAおよびタンパク質は、MOI 100で感染3日後に発現量が約60%減少し、SOD2酵素活性は約50%減少した。AdSOD2-shRNAとCYP3A4発現アデノウイルスを同時感染させたBRL3A細胞にダプソン、トログリタゾンを処理したところ、細胞障害性がコントロールと比較して濃度依存的に有意に増強された。同時にスーパーオキシドと活性酸素種の有意な増加が認められた。ロシグリタゾンの処理ではいずれの群においても障害性の差異は認められなかった。また、F344ラットへのAdSOD2-shRNA感染により、SOD2 mRNAおよびタンパク質は、2.0 × 1011 (pfu/body)で感染7日後に発現量が約70%減少し、SOD2酵素活性は約60%減少した。AdSOD2-shRNAを感染させたF344ラットにおいてアセトアミノフェンを1,000 mg/kg経口投与することで、コントロールでは認められなかった肝障害性が認められた。SOD2ノックダウン細胞およびSOD2ノックダウンラットは薬物誘導性肝障害を高感度に検出することができると示唆された。