日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-149
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医薬品,新規化学物質と,オミクス等の安全性評価
反復投与毒性のin silico評価 -毒性作用機序に基づいたメトヘモグロビン血症/溶血誘導物質のカテゴリー化-
*山田 隆志張 慧琪田中 雄四郎山田 隼前川 昭彦林 真
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抄録
 反復投与毒性試験は、化学物質の安全性評価において中心的な役割を果たしており、わが国の化学物質審査規制法(化審法)やEUのREACHなどにおいて化学物質の安全性の判定にも用いられている。しかし時間とコストがかかることから試験される化学物質は限られており、未試験物質の有害性評価を効率化するためにin silicoによる評価手法の導入が求められている。毒性学的、行政的な安全性判断のためには毒性発現の作用機序に基づき、評価結果の透明性を担保することが不可欠である。そこで本研究では反復投与毒性のin silico予測の方法論の確立を目指す取り組みとして血液毒性に着目し、作用機序カテゴリーの構築を試みた。
 まず化審法既存化学物質157物質の反復経口投与毒性試験のレポートを解析し、溶血性貧血を示す23物質を得た。続いてこれらの作用機序情報を収集し、精査した。その結果、N-メチルアニリン、3-ニトロアニリンなど芳香族アミン9物質は代謝活性化されてN-ヒドロキシルフェニルアミン、またはベンゾキノンイミン誘導体を生成し、ヘモグロビンと相互作用してメトヘモグロビンを形成し、溶血を誘導すると考えられ、これらを共通の作用機序をもつ物質群としてカテゴリーを作成した。続いて同様の作用機序をもつと考えられる2,6-キシリジン、m-クロロアニリンが選抜された。両物質はそれぞれ化審法反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験、NTP短期反復投与毒性試験において既に毒性評価されておりメトヘモグロビン血症/溶血を示したことを確認した。毒性の強度には反応性代謝物の生成量、赤血球への移行度などが影響すると考えられた。
 以上、毒性作用機序に基づいて構築したカテゴリーは、メトヘモグロビン血症/溶血のin silico予測に有用であることが示唆された。本研究はNEDO委託事業「構造活性相関手法による有害性評価手法開発」の一部として行われた。
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© 2009 日本毒性学会
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