日本トキシコロジー学会学術年会
第36回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-150
会議情報

医薬品,新規化学物質と,オミクス等の安全性評価
rasH2マウスを用いた皮膚二段階発がん性試験法の開発
*河部 真弓勝呂 繭子小川 三由紀古川 文夫浦野 浩司堤 秀樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
[目的]近年、rasH2マウス(日本クレア)を用いた短期発がん性試験が、マウス長期がん原性試験の代替法として使用されてきている。そこで我々は、rasH2マウスの持つ特徴を生かし、より短期に発がん性の有無を評価できる「超短期発がん性評価法」を開発する目的で、rasH2マウスの標的臓器の一つである皮膚を用いて検討を行った。
[実験1:イニシエーターとしてDMBAの用量設定]雌雄のrasH2マウス(各20匹)にDMBA50, 10, 2, 0 μg/ 100 μl acetoneを実験開始時に1回、背部皮膚に塗布し、26週間経過後に屠殺剖検した。その結果、背部の皮膚腫瘤は雄では50 μg群で実験19週より、雌では2 μg群で実験20週より各1例に観察された。その後雄の10 μg群、雌の10および50 μg群の各1例に腫瘤の発生がみられたが、腫瘤の発生率に雌雄差あるいはDMBAの濃度による差はみられなかった。
[実験2:プロモーターとしてTPAの用量設定および実験期間の検討]雌のrasH2マウスを用い、実験開始時にDMBAを50 μg/100 μl acetoneの濃度で1回背部皮膚に塗布し、その1週後より1週間に2回の頻度で TPAを8 µg /200 µL acetoneの用量で背部皮膚に塗布した。皮膚腫瘤はDMBA+TPA投与群で実験4週より観察され、5週には100%の発生率となった。7週経過時点で、DMBA+TPA投与群で多数の皮膚腫瘤が観察されたことから、8週で屠殺剖検した。最終的な1匹あたりの皮膚腫瘤の発生個数および発生率は、DMBA単独群で0個(0%)であったのに対し、DMBA+TPA投与群では62.4個(100%)、TPA単独群では0.2個(20%)であった。
[結論]rasH2マウスにDMBA(50 μg/100μl) およびTPA(8 µg /200 µL)を投与することにより、短期間で皮膚腫瘤が発生することが確認された。これはICRマウスを使用した場合の実験期間(20週)の半分以下であった。今後、このモデルを超短期発がん性試験法として確立すべくデータを積み重ねていく予定である。
著者関連情報
© 2009 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top