【目的】鳥類はダイオキシン類に対して非常にハイリスクであることが知られており,特に魚食性鳥類や猛禽類は体内のダイオキシン類
蓄積濃度が非常に高いという報告もある。本研究では,ダイオキシン類が結合する芳香族炭化水素受容体(AhR)について,分子生物学
的解析を行い,鳥類間における比較を行った。
【方法】シロフクロウ,アメリカワシミミズク,ゴイサギ,フンボルトペンギン,ダチョウ,チリフラミンゴ,インドクジャク,アオミ
ミキジ,ハヤブサの肝臓よりtotalRNA抽出を行い,AhRのcDNAについて塩基配列を解析した。さらにこのうち数種の鳥類に関しては,
クローニングしたAhR全長をCOS-7細胞に発現させ,レポーターアッセイにてこれらAhRの転写活性化能を評価した。また,ダチョ
ウにおいては初代培養細胞をAhRリガンドに曝露し,realtime-PCRによってダイオキシン類曝露の汚染マーカーとなるCYP1A5の誘
導能を調べた。
【結果】今回解析を行った配列に既報の鳥類AhR1塩基配列を加え系統樹を作成したところ,シブリー・アールキスト鳥類分類による
系統樹と酷似していた。またリガンド結合能を決定する二つのアミノ酸配列に着眼し比較した場合,これら鳥類が高感受性型(I324と
S380),低感受性型(V324とA380),中間型(I324とA380)の三種類に分類されることがわかった。中でも,今まで高感受性型のAhRアミノ酸
配列を有す鳥類はニワトリの他報告が無く,今回,系統樹では離れた位置に属するダチョウが,唯一ニワトリと同じ高感受性型である
ことが明らかとなった。