抄録
【目的】我々は第36回本学術集会において,ベンゾジアゼピン系静脈催眠・鎮静剤の血管刺激性を府川らが報告(日薬理誌, 71, 1975)
した貯留法での検討結果を報告した。今回,臨床適用に準じた単回投与による血管刺激性を評価するため,注入法(長瀬ら, 第34回本
学術集会, 2007)による検討を行った。【方法】日本白色種ウサギ(Kbl/JW)の後耳介静脈にシリンジポンプを用いてジアゼパム,ミダゾ
ラム及び開発中のJM-1232(-)の各製剤を単回投与(1mL/min, 3分間)した。投与部位の肉眼的観察は,投与前及び投与後6,24及び
48時間に血栓形成,炎症反応(紅斑・腫脹)を観察した。また,肉眼的観察終了後に投与部位組織を採取して病理組織学的検査を実施した。
【結果】肉眼的観察において,ジアゼパム投与群では,重度の血栓形成及び紅斑・腫脹がみられた。特に,腫脹は投与した耳介全体にお
よび,組織液の体外漏出がみられた例もあった。ミダゾラム投与群では,全例に軽微な血栓形成及び軽度から重度の紅斑・腫脹がみられ,
ジアゼパムと同様に重度の腫脹がみられた例もあった。一方,JM-1232(-)投与群では特に所見はみられなかった。病理組織学的検査
において,ジアゼパム投与群では血栓形成,細胞浸潤,血管内皮の脱落・剥離,浮腫,出血,線維化がみられた。ミダゾラム投与群で
は,細胞浸潤,浮腫,線維化がみられた。一方,JM-1232(-)投与群は特筆すべき所見はみられなかった。【結論】ジアゼパム及びミダ
ゾラムでは重度な炎症反応が認められ,注入法においても血管刺激性が認められた。また,今回の注入法において,刺激性のある薬剤
を投与することにより浮腫性の変化が主として発現することが判明した。一方,JM-1232(-)は刺激性が全く認められなかったことから,
その反応性の違いとして可能性のある一要因について報告する。