抄録
【目的】近年,肝細胞空胞化やミエリン様構造増加等の脂質蓄積症が懸念され,毒性を早期に検出する評価系の開発が必要とされている。
本研究は,蛍光標識リン脂質を用いたホスホリピドーシス評価に中性脂肪及びコレステロール蓄積評価を加え,画像解析により同一細
胞で同時に評価できる,in vitroハイコンテントアナリシス脂質蓄積評価系の構築を目的とした。【方法】リン脂質,中性脂肪及びコレ
ステロール蓄積の陽性対照化合物並びにそれぞれ適切な蛍光プローブを選択して測定系を構築し,測定系の同時再現性及び日間再現性
を確認した。次に,市販の20化合物について脂質蓄積を評価した。【結果】今回構築した測定系の同時再現性及び日間再現性は良好であっ
た。市販20化合物では,中性脂肪,リン脂質及びコレステロールの同時蓄積(4化合物),中性脂肪及びリン脂質の同時蓄積(6化合物),
中性脂肪の単独蓄積(5化合物)がみられ,残り5化合物はいずれの脂質の蓄積もみられなかった。従って,細胞内の脂質蓄積が陽性の場
合は必ず中性脂肪蓄積を伴っていた。更に,2あるいは3種類の脂質の同時蓄積がみられた化合物では,それらの脂質はほぼ同一部位
に局在していることが合成画像により判明した。また,本法と既報との中性脂肪蓄積評価の一致率は82%,リン脂質蓄積評価の一致率
は100%,報告の少ないコレステロール蓄積評価の一致率は100%であった。【結論】今回確立した評価系は,リン脂質,中性脂肪及び
コレステロールの組合せでハイコンテントアナリシス評価を行う初めての評価系であり,3種類の脂質を同時評価できることはスクリー
ニング時のスピード及びコストの観点からメリットが高い。更に,同一細胞内で同時評価ができることにより,それぞれの細胞内挙動
の解析が容易になることから,創薬研究の早期段階で脂質蓄積評価に有用な試験系と考えられる。