日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P81
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一般演題 ポスター
CYP2C19遺伝子多型によるサリドマイド体内動態変化に関する研究
*松澤 直樹中村 克徳百瀬 泰行松永 民秀松田 正之大森 栄
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抄録
【目的】サリドマイドは,睡眠薬として開発・販売されたが,妊娠初期に用いられた場合にフォコメリアと呼ばれる四肢の全部あるいは 一部が短いなど特有の奇形を持つ新生児の多発が報告された。このことから,日本では1962年に販売が中止されたが,近年,再発又 は難治性の多発性骨髄腫治療薬としての効能が見いだされ,2009年2月に販売が再開された。サリドマイドは,その一部がCYP2C19 により代謝されることが報告されているが,CYP2C19 遺伝子多型によるサリドマイドの動態への影響および薬効・副作用への影響に ついてはほとんど報告がない。本研究では,サリドマイドを安全で適正に使用するため,サリドマイド血中濃度とCYP2C19 の関連の 有無について検討した。
【方法】サリドマイド(海外の輸入品あるいはサレドカプセル)投与を受けている信州大学医学部附属病院(当院)入院中の日本人患者5名 から文書による同意を得た後,末梢血を採取しCYP2C19*2および*3 遺伝子変異の有無をPCR-RFLP法により判定した。血中濃度は Sembongiら1)の報告を参考にHPLCを用いて測定した。なお,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得ている。
【結果】サリドマイド服用患者5名のCYP2C19の遺伝子型は, それぞれCYP2C19 PM2名,CYP2C19 heteroEM3名であり, CYP2C19 EMはいなかった。CYP2C19 PMの患者では,CYP2C19 EMの患者と比較しCmaxがおよそ1.6倍に上昇していた。
【考察】本研究から,CYP2C19の遺伝子型がサリドマイドの体内動態に影響を与える可能性があることが示唆された。現在のところ, この薬物動態の変化が薬効及び副作用にどの程度影響を及ぼすかは不明である。また,この変化が製剤学的な違いによる可能性もある ことから,今後症例数を増やして詳細に解析する。
1) Sembongi K et al:Biol Pharm Bull . 31, 497-500, 2008.
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© 2010 日本毒性学会
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