日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P134
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一般演題 ポスター
サル凍結肝細胞を用いたキノロン系抗菌薬の糖新生に対する影響
*井口 拓馬後藤 浩一神藤 敏正三分一所 厚司
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抄録

【目的】キノロン系抗菌薬(キノロン薬)の副作用の一つである低血糖にはインスリン分泌亢進あるいは糖新生抑制の関与が報告されてい るが,詳細は明らかではない。そこで,キノロン薬moxifloxacin(MFLX)及びgatifloxacin(GFLX)のサル初代培養肝細胞における糖新 生に及ぼす影響を検討した。
【方法】雄性カニクイザル由来初代培養肝細胞をdexamethasone及びN6,2'-O-dibutyryladenosine 3',5'-cyclic monophosphateを含 む誘導培地で一晩培養し,糖新生基質としてlactic acidとsodium pyruvate(L/P)を添加したMFLX及びGFLXを含む培地で4時間処理 (濃度:10μM ~1000μM)した後,上清のグルコース濃度を測定した。さらに,fructose-6-phosphate(F6P)またはphosphoenol pyruvate(PEP)を基質としてL/Pと同時に添加し,基質による反応性の違いを検討した。また,糖新生に関わるfructose-1,6- bisphosphatase,glucose-6-phosphatase(G6Pase),phosphoenolpyruvate carboxylase(PEPCK)1,PEPCK2及び解糖系に関わ るpyruvate dehydrogenase,pyruvate kinaseのmRNA発現量を定量的リアルタイムRT-PCR法により測定した。
【結果及び考察】細胞をMFLX及びGFLXで処理した結果,両化合物はL/Pを基質とした糖新生を用量依存的に抑制した。また,基質と してPEPを加えた場合でも糖新生は抑制されたが,F6Pを加えた場合の糖新生抑制は改善された。さらに,解糖系あるいは糖新生関連 酵素の遺伝子発現に及ぼす影響を調べた結果,両キノロン薬で,PEPCK1及びG6PaseのmRNA発現量の増加あるいは増加傾向が認め られ,糖新生抑制による代償性変化の可能性が考えられた。以上,GFLX及びMFLXは,サル初代培養肝細胞において,L/Pを基質と した糖新生を抑制し,特にPEPからF6Pに変換する過程に影響している可能性が考えられた。

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© 2010 日本毒性学会
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