抄録
<緒言>薬物弁別実験は薬物の精神依存性を検索する試験法の1つであり,般化テストにおいて,弁別形成薬物の内部感覚刺激(弁別刺
激効果)を既知の依存性薬物と比較することができる。しかし,般化テストでは薬物投与からテスト開始までの時間が大きな問題であり,
最適な時間を選択しなければ般化の有無を見誤る可能性がある。そこで本研究では,コカインと生理食塩液を弁別したラットにおいて,
テスト薬物投与からテストまでの時間が般化の成績に及ぼす影響を観察した。
<方法>2つのレバーのうち正選択と定めた側を連続10回押せば餌ペレットが1個提示される強化スケジュールで,ラットにコカイン
(10mg/kg, i.p.)と生理食塩液の弁別訓練を実施した。次いで,弁別獲得ラットにコカイン(10mg/kg, i.p.)及びMAP(1mg/kg, i.p.)を
投与して般化テストを実施した。薬物投与から般化テスト開始までの時間は,投与後15分から15分間隔で最大75分までとした。般化
テストでは,総レバー押し回数に対するコカイン側のレバー押し回数の割合が80%以上であれば般化がみられたと判定した。
<結果>コカインでは,投与後15及び30分では般化がみられたが,45分では般化はみられなかった。MAPでは,投与後15分から60
分までは般化がみられたが,75分では般化はみられなかった。一方,生理食塩液では,どの時間帯においても般化はみられなかった。
<考察>般化がみられる時間帯が,コカインと比べてMAPの方が長かったのは,半減期が長いことによるものと考えられる。両薬物
ともに,般化がみられた時間帯は既報における自発運動量増加効果がピークを示す時間帯とよく対応したことから,少なくとも中枢興
奮薬の般化テストにおけるテスト薬物投与からテストまでの時間は,自発運動量増加効果を指標に決定できることが示唆された。