抄録
【目的】Neurokinin familyとしては,主に生体内リガンドとしてsubstance P,neurokinin A,neurokinin B,それぞれが結合する
受容体としてNK1,NK2,NK3 receptorが存在し,その生殖機能制御における役割(特にLH分泌への影響)については様々な報告が
ある。Triple neurokinin receptor antagonist(TNRA)の反復経口投与毒性試験で精巣毒性が認められたことから,ラットを用いて,
TNRAおよび3種類のreceptor antagonistのLH分泌に及ぼす影響を検討した。【方法】性ホルモンのnegative feedback作用を解除し
て血漿中LHレベルを増加させた雌雄の去勢ラットを用いて,TNRA 1000mg/kgを単回経口投与,あるいはTNRA 100 nmolを脳室
内投与し,血漿中LH濃度を測定した。また,TNRA 1000mg/kgを単回経口投与した雄ラットの血清中テストステロン濃度を測定し
た。さらに,どのタイプのneurokinin receptorとの拮抗作用が原因であるかを検討するために,去勢雌ラットを用いてFK888(NK1R
antagonist), SR48968(NK2R antagonist), SB223412(NK3R antagonist)の各100 nmolを脳室内投与し,血漿中LH濃度を測定
した。採血は,頸静脈から右心房内へ留置したカニューラより,LHは6分間隔で連続3時間,テストステロンは30分間隔で連続8時間
実施した。脳室内投与はマイクロシリンジを用いて1μL/minの速度で第_III_脳室に投与した。【結果】雌雄の去勢ラットにおいてTNRA
の経口投与,第_III_脳室内投与ともにLH分泌の抑制が確認された。また,TNRAの単回経口投与した雄ラットにおいてテストステロ
ン分泌の抑制が認められた。各種antagonistの脳室内投与実験の結果,SR48968を投与した動物において明らかなLH分泌抑制作用が
観察された。【考察】TNRA投与により,まずLH分泌が抑制され,テストステロン合成が抑制されて精巣毒性が発現すると考えられた。
また,NK2 receptor拮抗作用がLH分泌抑制の主要因のひとつであると考えられた。