日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S8-3
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S8 医薬品の環境リスク評価の現状と課題
わが国の医薬品環境リスク評価の考え方
*西村 哲治
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抄録

 欧米諸国では,1990年代後半から,医療もしくは畜産用の医薬品およびその代謝産物,個人で使用される家庭衛生用製品等の成分 である化学物質が,水環境から検出される事例が報告されている。我が国においても,下水,下水処理水,河川水および地下水などの 水試料から検出する事例が報告されている。近年,水環境から医薬品等を由来とする化学物質が検出されるようになった理由は,分析 技術の向上により極低濃度の化学物質が検出できるようになった背景があると考えられるが,生活習慣病の広がりや高齢化などに伴う 医薬品の使用量の増加,健康により気を配る社会的な背景が影響している可能性があるのであろう。これまでの報告事例では,実際に 検出された医薬品等を由来とする化学物質の種類は多数にのぼるが,一般環境水中における濃度はpptのオーダーと,一部の物質を除 き概して低い。しかし,医薬品はその使用目的から生物の生理作用や機能に作用を及ぼす化学物質が多く,一般化学物質と同様,環境 に放出された後には化学物質としての挙動と環境に影響を及ぼす可能性があることから,環境中に放出された際の生態系に対する影響 に関心は高まっている。
 欧米諸国では,医薬品の環境影響に関するガイドラインがすでに設定され,新薬承認申請の際の有効性や安全性の評価とともに,環 境影響評価のデータを提出することが試行的に始められている。我が国においても,国際的な視野にたった医薬品の環境影響評価法の ガイドラインに関する考え方を整理することは重要である。そこで,欧米で現在実施されている環境影響評価の考え方や手法を踏まえ て,日本における医薬品の環境リスク評価の考え方,評価法の手順・手法などについて整理する。

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© 2010 日本毒性学会
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