日本トキシコロジー学会学術年会
第37回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P211
会議情報

一般演題 ポスター
健康食品と医薬品の相互作用(5):ローズヒップエキスの連続投与がニフェジピンの体内動態に及ぼす影響
*長友 暁史西田 典永小崎 敏雄西村 亜佐子成橋 和正大西 憲明芝田 信人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】健康食品やサプリメントの安全性を確保する上で,依然として不足している医薬品との相互作用情報の蓄積は急務であり,安全 かつ適正な使用を実現するために必要不可欠である。演者らは医療現場に従事する医師・薬剤師への適切な情報提供を行い,健康食品 と医薬品との相互作用による事故を未然に防ぐことを目的とし,健康食品に使用される様々な食品素材が薬物代謝酵素CYP3Aに及ぼ す影響について,CYP3Aの基質薬物である高血圧治療薬ニフェジピンの体内動態の変化を指標として評価してきた。バラ科のローズ ヒップ(Rosa canina L.の果実)は,ビタミンCが豊富に含まれることからお茶やサプリメントなどに利用されている。最近,種子に含 有されるフラボノール配糖体tilirosideが抗肥満作用を示すことが見出され,メタボリックシンドロームの予防に有効な食品素材として 注目されている。今回,ローズヒップエキス(RHE)およびtilirosideの4日間連続投与がニフェジピンの体内動態へ及ぼす影響について 検討した。【方法】RHEまたはその主成分であるtilirosideをWistar/ST系雄性ラット(体重約300g)に1日1回,4日間経口投与した。投 与量は常用量(ヒト1日推奨摂取量を体重換算したもの)とその10倍量および20倍量の計3種類とした。最終投与前日に頸静脈カニュー レを施して一晩絶食し,最終投与30分後にニフェジピンを経口投与した。採血はカニューレより非拘束下で経時的に行った。血中ニフェ ジピン濃度をLC/MS/MS法により定量し,モーメント解析により薬物速度論的パラメータを算出した。【結果および考察】ポジティブコ ントロールとして設定したCYP3A阻害薬ケトコナゾール投与群は,4日間の連投によりニフェジピンのCmaxおよびAUCが有意に増大し た。一方,RHE投与群またはtiliroside投与群は,CmaxおよびAUCの増加傾向,t1/2の延長傾向が認められたが,統計学的に有意な差は 観察されなかった。よって,RHEおよびその主成分tilirosideは,連続的に使用してもCYP3Aにより代謝される医薬品の体内動態に影 響を及ぼす可能性は低いことが示唆された。

著者関連情報
© 2010 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top