抄録
医薬品はその使用過程において下水等を通じて環境中に排出されることが知られているが、それらが生態系に対してどのような影響を及ぼすかについて、適切な方法で評価し、基礎的な知見を蓄積することは重要である。現在、医薬品の環境に及ぼす影響の評価に関して、海外ではFDAが1998年に、EMAが2006年にその手順・方法をガイドラインとして提示しており、新薬承認申請時に環境リスク評価成績の提出が義務付けられている。また、カナダでも同様のガイドライン策定に向けた準備が進んでおり、さらに、本邦においても厚生労働省環境リスク評価研究班によりガイドラインの内容が検討されていることが、2010年開催の第37回の本学会学術年会のシンポジウムで紹介されている。
製薬協においては、2006年に「医薬品の環境リスク評価に関するアンケート調査」を実施し、製薬協加盟会社の評価体制準備状況やガイドライン策定についての意見をまとめ、その成果を2007年開催の第34回の本学会学術年会で発表している。今般、本邦での医薬品の環境リスク評価ガイドライン策定準備が進められていることを踏まえ、前回調査からの進捗状況や本邦ガイドライン策定についての具体的な意見や要望を伺う目的で、製薬協加盟会社に対し2回目のアンケート調査を実施した。さらに、本調査では欧米での環境リスク評価に関わる状況について把握するため、製薬協加盟会社の海外関連会社からの情報も収集することを試みた。これらの成果をまとめて報告する。