日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S8-3
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HESI IVGTシンポジウム
ハザードからリスク評価へ-遺伝毒性の新たなる前進
遺伝毒性のパラダイムシフト;ハザードからリスクへ
*本間 正充
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抄録
これまでの遺伝毒性試験は、発がん可能性のある化学物質をできるだけ広範囲にスクリーニングするため、その検出感度の向上による遺伝毒性ハザードの同定に焦点が当てられてきた。しかしながら、このストラテジーは、ヒトに対するリスクとは無関係と思われる陽性反応を多くもたらす結果となり、そのわずかな遺伝毒性の真偽を巡り規制が進まないことがしばしば起こる。そのため現在では、遺伝毒性においてもハザードからリスクへの転換が求められている。このパラダイムシフトはICH(医薬品規制調和国際会議)ガイドラインに強く反映されている。たとえばICH-S2(遺伝毒性試験)ではin vitro哺乳類細胞を用いた遺伝毒性試験では非生理的条件下で起こりうる擬陽性を避けるため最高用量の低減化、毒性条件の緩和等が行われた。一般に、リスク評価には暴露評価と共に、ハザードの同定(Hazard identification)が必要とされるが、遺伝毒性で重要なのはハザードの同定ではなく、ハザードの特徴付け(Hazard Characterization)である。このためには1)Weight of Evidence (WOE); 試験結果の生物学的妥当性、2)Mode of Action (MOA);ヒトに対する遺伝毒性ハザードの妥当性、3)Genotoxic Mechanism;発がんへの関与の妥当性、4)Quantitative Analysis;定量的評価の4点から遺伝毒性試験結果の評価および、試験ストラテジーの構築をする必要がある。HESI-IVGTプロジェクトではこのHazard Characterizationに必要な要因を明らかにし、改良、開発を行うことにより、真の遺伝毒性リスク評価を行うことを目的としている。
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© 2011 日本毒性学会
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