日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: S9-2
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コリンエステラーゼ阻害物質による遅発性の中枢神経毒性
-サリンの臨床から学ぶ動物モデルの機構解析-
ヒトにおけるサリン被曝後の多様な遅延性神経毒性症候について
*黒岩 幸雄木村 晋介
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抄録
 世界から戦争がなくならない限り、通常兵器の発達とともに使われるNBCといわれる核、生物、化学兵器などは密かに新しいものが造られていくものである。特に化学兵器に関しては、本日のシンポジウムで取り上げられるように、神経毒ガスサリンが極微量でヒトを殺傷し、しかも長年にわたって回復し難い神経に対する後遺症を残すことが分かってきた。日本のみならず、世界をも震撼させた地下鉄サリン事件の多くの被曝者が、現在でも多彩な神経症状に苦しんでおられる事実がある。サリンは、一般の研究者では管理や取り扱いが困難で、現在ではサリンを用いてヒトに対する作用を研究発表した例は皆無である。従って、世界中の多くの研究者は、日本で行われた医療処置や治療にあたった医療チームからの情報を入手したいと思うのも無理からぬことである。いずれにしても、サリン被曝者の診断と治療に関して、現在まで蓄積されてきた内容が、本シンポジウムで初めて明らかにされる。特にヒトにおける遅延性神経毒性について、現在まで明らかにされている例が紹介される。さらに、アセチルコリンエステラーゼを標的とする有機リン系化合物の遅延性神経毒性としての発達障害、認知・行動障害などの発現に関する話題も提供される。これらの話題を通して、神経系に作用する化学物質の急性あるいは慢性的な曝露による遅延性の神経毒性に関する理解が深まることであろう。
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© 2011 日本毒性学会
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