抄録
医薬品開発においてバイオ医薬品の開発が注目されている。バイオ医薬品での毒性の評価を効果的に行うためには、受容体またはエピトープが発現しており、被験物質が薬理学的活性を示す動物種の選択を行う必要がある。このため、バイオ医薬品の非臨床安全性試験には非ヒト霊長類、特にカニクイザルが用いられることが多い。非臨床安全性試験における反復投与毒性試験での精巣毒性および雄性生殖能を評価する際の指標となる、月齢、精巣容積、精子検査(精子数、精子運動性、精子形態による奇形率)および血清中テストステロンの相関について、無処置動物を用いて検討したので報告する。
57箇月齢~98箇月齢、体重4.2~8.7 kgの雄カニクイザル184例を使用した。精巣容積は精巣外径の長径、短径から算出した。精子検査は、陰茎電気刺激法により精液を採取し、精子運動能解析装置(IVOS sperm analyzer、Hamilton Thorne Biosciences社)を用いて精子数および精子運動性(運動精子率、遊泳速度、頭部の振幅平均値、頭部の振動数、直線性、軌道平均速度、直線速度および軌道直線性)を測定し、奇形率については塗抹標本を鏡検して算出した。血清中テストステロン値は9時~10時と21時~22時の2回採血し、ELISA法により測定した。
精子数は月齢と僅かに正の相関がみられた。精巣容積と精子数、精巣容積と血清中テストステロンには正の相関がみられた。また、運動精子率と奇形率には負の相関がみられた。血清中テストステロンと精子数、精子運動性および奇形率には相関がみられなかった。したがって、精巣容積は、カニクイザルの雄性生殖能を評価する際の、再現性ある指標のひとつと判断した。