日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-151
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28日間反復投与試験結果と相関する遺伝子発現データセットの開発
今井 順一*加藤 史子河村 未佳渡辺 慎哉
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抄録
【目的】従来の反復投与毒性試験は血液学的検査や病理組織学的検査を主体としているため、生物学的情報の種類が限られる。さらに、病理組織学的検査は判断した者の主観に左右される要素が大きく、同じ病態でも記述される表現が異なる場合があり、異なる化学物質間または異なる臓器間において同一の客観的な指標で比較できなかった。そこで、我々は、効率的かつ高精度な有害性評価システムを構築するための新たな指標を探索する目的で、28日間反復投与試験結果と相関して発現変動する遺伝子群の特定を試みた。
【方法】国立医薬品食品衛生研究所の「既存化学物質毒性データベース」にある化学物質から40種類を選択し、該データベースのプロトコルに準拠して28日間反復投与試験を行い、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現プロファイルを取得して比較した。
【結果】各種化学物質を曝露したラットから最大26臓器を採材し、そこから1,028サンプルの遺伝子発現プロファイルを取得した。次に、化学物質の曝露により発現変動した遺伝子群(生体応答遺伝子群)を抽出した。生体応答遺伝子群の発現変動を指標とすることで、(1)特定臓器における化学物質間の比較により化学物質が生体に与える影響の類似性の評価、(2)特定の化学物質における臓器間の比較により化学物質の標的臓器の評価、を可能とした。特に、肝臓や腎臓において、クラスタ分析で対照群と区別できた化学物質は該データベースで毒性があると報告された化学物質とほぼ一致した。さらに、特定の化学物質投与期間のタイムコース試験を行ったところ、肝臓で投与期間と相関して発現変動する遺伝子群(372遺伝子)を特定した。これらの結果は、従来の毒性学的手法にゲノム学的手法を加えることで、化学物質の有害性の指標となりうる遺伝子群の特定等により、従来の毒性試験では取得困難であった情報を付加し、化学物質の有害影響評価の高度化・効率化に貢献できる可能性を示唆する。
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© 2011 日本毒性学会
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