日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-152
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アドリアマイシン毒性軽減機構におけるCOPII小胞輸送経路の関与
深澤 ちさと晴山 聖子廣瀬 健一郎*高橋 勉永沼 章
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抄録
 我々は真核生物モデルとして出芽酵母を用いて、アントラサイクリン系制がん剤アドリアマイシンの毒性発現機構の解明を目指している。これまでに小胞体からゴルジ体への小胞輸送経路(COPII小胞輸送経路)の抑制がアドリアマイシン感受性を増強することを見出しているが、その詳細な作用機構については分かっていない。そこで、本研究では、アドリアマイシン毒性軽減機構におけるCOPII小胞輸送経路の役割について検討した。  小胞体で合成された蛋白質(カーゴ蛋白質)は、COPII小胞を介してゴルジ体に運ばれ、そこで様々な修飾を受けた後、目的のオルガネラに選別輸送される。カーゴ蛋白質の中には、特定のカーゴレセプターによって認識され、COPII小胞によって運ばれる蛋白質が存在する。そこで、これまでに知られている9種のカーゴレセプターとアドリアマイシン感受性との関係を検討したところ、Erv14を欠損させた酵母のみがアドリアマイシン高感受性を示した。また、Erv14と小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送経路関連因子 (Sec22) を同時に欠損させても、相加的または相乗的なアドリアマイシン感受性の亢進が認められないことから、Erv14と小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送経路が同一のアドリアマイシン毒性軽減機構に関与していることが示唆された。さらに、ゴルジ体から他のオルガネラ(エンドソーム、細胞膜および液胞)への小胞輸送経路の低下はアドリアマイシン感受性にほとんど影響を与えないことも判明した。したがって、Erv14依存的に小胞体からゴルジ体に輸送され、ゴルジ体で機能する蛋白質もしくはゴルジ体から小胞輸送経路を介さずに他のオルガネラに運ばれる蛋白質(X蛋白質)がアドリアマシン毒性軽減に関わっている可能性が考えられる。今後、X蛋白質を明らかにすることによって、COPII小胞輸送経路によるアドリアマイシン毒性軽減機構解明の糸口が得られるものと期待される。
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© 2011 日本毒性学会
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