抄録
医薬品開発における有効性、安全性およびトキシコ/ファーマコキネティクス等の前臨床試験には実験動物の利用が必須となっている。非げっ歯類の一種であるミニブタは、さまざまな点でヒトに近いと考えられてきたが、その体格から取扱いが難しく、かつ多量の被験物質が必要なため、動物実験への応用は躊躇されてきた。しかしながら、2008年に国内で超小型実験用ミニブタ(マイクロミニピッグ)が開発され、ヒト薬物代謝予測の観点から、マイクロミニピッグの創薬研究への応用が期待されている。
動物実験で観察されえなかった薬剤性心毒性あるいは肝毒性が、臨床試験や市販後に見出されることも少なくない。このリスクを回避するためには、循環器疾患モデルなど、実験動物を効率的に活用し、病態時における候補品の低用量および高用量における生体内運命と暴露影響を把握することが重要である。本研究では、医薬候補品の薬物動態試験で注目されはじめたマイクロミニピッグ肝とヒト肝のチトクロムP450 (総称をP450、各分子種をCYPと記す) が触媒する典型的な薬物代謝酵素活性を比較した。サル、イヌ、ミニブタおよびヒト肝に共通して典型的な薬物酸化酵素活性が認められた。マイクロミニピッグとヒト肝の向精神薬の水酸化反応 (CYP3Aの指標)は位置選択的であったが、ミニブタ肝のβ遮断薬の水酸化酵素活性は、ヒトに比べて高い触媒機能が認められた。他演者らにより開発された食餌成分を利用したマイクロミニピッグ循環器疾患モデルにおける主要薬物代謝酵素活性の変動は限定的であった。
以上、ミニブタ肝代謝酵素活性の特徴が明らかとなった。医薬候補品の暴露影響や薬物相互作用評価をin vivoで行う際も、健常あるいは病態時の薬物消失を予測することは重要である。本研究の成果は、前臨床試験におけるこれら実験動物マイクロミニピッグの基盤情報となることが期待される。