抄録
医薬品中には、合成過程の試薬や反応中間体、副産物、もしくは分解物等が不純物として存在することがあり、これら不純物の安全にも注意を向ける必要がある。ICHのQ3ガイドラインでは医薬品(原薬および製剤)の不純物の規格限度値に関して、最大一日投与量に基づく安全性確認の閾値を規定し、それを超えるものについては、安全性を確認するための試験を求めている。しかしながら、それら不純物に遺伝毒性や発がん性が疑われた場合、具体的な安全性確認の方法については記載がない。一般に遺伝毒性物質、特にDNA反応性(変異原性)物質には閾値がないとされているため、たとえその不純物が微量であったとしても、その暴露による発がんリスクは否定できない。2006年、欧州医薬品庁は医薬品の遺伝毒性不純物に関するガイドラインを発表し、また米国FDAも2008年に同様のドラフトガイドラインを提出した。これを受けて2010年から日本、欧州、米国による国際的ガイドライン(ICH-M7 guideline)の策定が開始された。このガイドラインには臨床開発中および承認後の医薬品に含まれるDNA反応性(変異原性)不純物に暴露された場合の治験者・患者の生涯発がんリスクの特徴を明らかにし、そのリスクの軽減と管理のための様々な方法を取り入れる。その一つとしてとして、“Threshold for Toxicological Concern: TTC(毒性学的に懸念すべき閾値)”の考えがある。TTCはそれ以下ではヒトの健康リスクに影響を与えないという1日許容摂取量で、上市医薬品のDNA反応性(変異原性)不純物については1.5ug/dayを目標とする。一方、この基準をクリアーできない場合には、別に適切な試験、もしくは構造活性相関(QSAR)を実施し、リスク管理することが求められる。