抄録
医薬品の開発の中で、遺伝毒性試験は、ヒトにおける発がんや催奇形性に繋がる重大な不可逆的毒性を予測する目的で実施することから、医薬品開発の安全性試験の中で最も重要な評価項目のひとつである。
化学物質には、DNAと結合しやすい特徴を持つものがある。このような物質(遺伝毒性物質)はDNAと反応することにより、DNA鎖切断・付加体形成、染色体異常、遺伝子突然変異など様々な傷害を引き起こす。これが修復されず固定化されてしまうと、発がんや催奇形性につながる。つまり遺伝毒性試験とは、化学物質がこのような重篤な遺伝子傷害を引き起こす物質であるかを予測する試験である。そのため、初めてヒトに投与される前に基本的な評価を終了していなくてはならない。
DNAへの作用や、染色体への影響を評価する試験方法について具体的に紹介し、遺伝毒性試験の全体像への理解への一助としたい。
[参考文献]
1.Guidance on Genotoxicity Testing and Data Interpretation for Pharmaceuticals Intended for Human Use (ICH S2(R1))
2.Casarett and Doull’s Toxicology, The Basic Science of Poisons, 7th Edition, 381-413
3.日本トキシコロジー学会教育委員会, [新版]トキシコロジー, 155-168