抄録
【目的】 Perfluorooctane sulfonate(PFOS)は、近年注目されている難分解性有機フッ素化合物で、環境中に広く存在し、その毒性全貌はまだ不明である。本実験では、PFOS暴露によるラット血清中甲状腺ホルモン低下のメカニズムを検討にすることにした。
【方法】 ラットに90日間PFOSを連日経口暴露された後、血清中の甲状腺ホルモン濃度と甲状腺ホルモンの合成、代謝に関連する酵素の活性と遺伝子発見に及ぼす影響を観察した。
【結果及び考察】 PFOS暴露群の血清中TT4濃度は対照群に比べて有意に低下し、低下程度は暴露濃度に依存したが、FT4とT3の低下または甲状腺刺激ホルモン濃度の上昇は見られなかった。PFOS暴露群では肝臓組織中UGT1A1遺伝子発見の顕著な上昇と甲状腺組織中のDIO1活性の低下が観察されたが、甲状腺合成に関連するThyroperoxidaseの活性、甲状腺組織のSodium iodide symporter(NIS)とTyroid stimulating hormone receptor (TSHR)遺伝子発見の異常変化は観察されなかった。本実験により、PFOS暴露によってラット肝臓でT4がUGTとの結合が増強される一方、T4の代謝が促進されて、血清中のT4の濃度が低下されると思われる。