抄録
【背景と目的】ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル(MEE)は、液体洗浄剤に使用される非イオン界面活性剤である。我々はMEEのヒト健康影響に対する評価を行い、変異原性、感作性はいずれも陰性であり、局所刺激性も弱いことを確認している。今回、MEEの長期使用時の生殖機能ならびに全身に対する影響を検討する目的で、反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD422)を実施した。【方法】SD系ラット(雌雄各12匹/群)を用い、雄には交配前14日間及び交配期間を通して剖検前日まで(55日間投与)、雌には交配前14日間及び交配期間並びに妊娠期間を通して授乳4日まで(40~44日間投与)MEEを投与した。投与は、MEEを0、0.5、0.9及び1.3%濃度で混じた飼料の自由摂取で行なった。一般状態観察・体重測定を実施し、投与最終週に尿検査を行なった。投与期間終了後、剖検し、肉眼観察、臓器重量測定、血液学的検査、血液生化学的検査、血中ホルモン(TSH、T3およびT4)測定、及び病理組織学的検査を実施した。【結果及び考察】反復投与毒性については、全投与群においていずれの検査項目とも被験物質投与による影響は認められなかった。生殖発生毒性については、全投与群において母動物のいずれの検査項目、また授乳期中の哺育状態並びにその児についても異常は認めらなかったことから、MEEは生殖機能、児の成長・発達に影響は及ぼさないものと考えられた。これらの結果から、MEEのNOAELは雌雄ともに1.3%(雄714.9 mg/kg/day、雌974.9 mg/kg/day)を超えるものと推定された。